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決心した。
自信なんてほんの欠片も無かった。
でも行くことに決めた。
考えてみれば、生まれてこの方、自信を持って何かに臨んだことは・・・やっぱりない。(苦笑)
でも、自信を持たない自分が、何故か嫌いではない。
いい訳はともかく、本当に不安を一杯背負っての挑戦だった。
300日超えのメンバーの中で唯一と言って良いくらいに危うい存在の僕が、もしここで落ちたら・・・
あいつにできるんだから、オレも頑張れる・・・
と歯を食いしばって頑張っている後続の住人たちは、落胆すると思った。
あるいは僕などを応援してくれている住民には何と申し開けば良いのだろう。
それでも僕は行く。
その場所は、禁煙開始までは飲み会の最後に訪れていたお気に入りの店。
しかし、300日を超えた僕を、あっと言う間に振り出しに戻してくれそうな煙の巣窟でもある。
賭けとも言えるけれど、いつかは通らなければいけない道だ。
ものごとには縁とか、タイミングとか、時期というものがあるだろう。
きっと今がそのタイミング。
そう言い聞かせた。
とんとんと軽やかに階段を下りて、一年振りの重たい扉を押す・・・。
煙の中に、いきなり懐かしい顔が目に飛び込んできた。
先週も来たんだっけ?と勘違いするような暖かな笑顔で迎えられ、心ごと抱き締められた気持ちがした。
カウンターに腰掛け、グラスに響く氷の音を感じながら辺りを見回すと、様々な顔が目に入ってくる。
あれはマルメンライト、こっちはケント1、そっちは・・・おぉハイライト、そしてセラムピアニ1・・・。
久しぶりに見る懐かしい顔、顔、顔・・・。
顔がないのは僕だけだ。
これまで考えもしなかったことが、一つ一つ新鮮に見えた。
煙草の取り出し方、火の点け方、指での挟み方、口に運ぶタイミング、消し方・・・
それらの全てが一致するような吸い方なんて一つもなさそうに見えた。
暫くの間、そんな観察をしていて、不意にどこか不思議な感じがすることに気がついた。
何だろう・・・?
俺か?
それとも連中か?
それが何か、はっきり分からないけど、何かが奇妙だ。
違和感と言ってもいい。
恐らくは、僕だけが煙草を吸っていないことで、何となく座りが悪いのだろう。
なにせ、全員が喫煙者だ。
しかし、いつしか、そんなことも忘れていた。
その店は歌好きの集まる店で、プロ級やセミプロも多い。
暫くの間、他の客の美しい歌声や、顔見知りのバーテンとの会話に身を委ねた。しかし、彼のバーテンは僕が煙草を吸わなくなったことに全く気が付いていないらしかった。思い切って尋ねてみた。
オレ、何か変わったと思わない?
寡黙なその男は、待っていたかのように微笑んだ。
いつからですか?
気付いていたのか・・・。
まもなく11ヶ月に・・・・なる
時間、経つの早いですね・・
その時、漸く僕は気がついた。
止まり木に腰を下ろした瞬間から感じていた不思議な感覚・・・。
それに気が付いた瞬間、喜びとも、快感ともつかぬ、思わずほくそ笑みたくなるような、言い知れぬ感覚が湧き上がってきた。
吸いたくなってないじゃん・・・
入店以来、ずっと客やスタッフの煙草ばかりに目を奪われてきた。
なのに、煙草を吸うということには全く関心がないことに初めて気が付かされた。
平気だ、へーき
全然へーき
吸いたくないじゃん♪
それからどのくらいの時間が流れたろうか・・・。
ありがとうございました
見送るスタッフに手を振る僕を、朝の柔らかい日差しが包み込んだ。
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